鍼灸の研究論文はある?ない?
鍼灸はマイナーな分野なことや、世間一般からのイメージなどから、「鍼灸は科学的根拠がない(はず)」であったり、「鍼灸自体が科学的ではない(はず)」と言われてしまうことが多々あります。
実は、建部らが医道の日本に載せた「論文から読み解く科学的知見 鍼灸ワールドコラム(第71回)激増する鍼研究の英語論文 : 日本は世界の潮流に乗り遅れた」というペーパーをみるとこういった「まことしやかにささやかれている科学的論文(根拠)がない」は間違いであることがわかります。
ペーパーの中で、Maらによる鍼灸論文に関する研究を紹介しています。1995年から2014年の20年分の論文数を調査した結果は以下、、、
論文数(1~5位)
1)中国:
①総論分数6,308(47.4%)②英語論分数2,320(27.1%)
2)アメリカ:
①総論分数2,330(17.5%)②英語論分数2,316(26.9%)
3)イギリス:
①総論分数1,096(8.2%)②英語論分数1,095(12.7%)
4)韓国:
①総論分数707(5.3%)②英語論分数688(8.0%)
5)日本:
①総論分数369(2.8%)②英語論分数326(3.8%)
世界全体では、①総論分数13,320 ②英語論文数8,598という結果が紹介されています。また、2010年から2014年の年平均発表論分数1,194編とのことです。
世界で鍼灸のRCTは日本が初
RCTいう方法をご存知ですか?日本語ではランダム化比較試験といいいます。研究対象をランダムにグループ分けすることによって、グループ同士の差を消す目的があります。このRCTは差を消すことができるため、「質の高い研究」と言われています。現在の科学研究では積極的に用いられています。多くの鍼灸に関する研究でもこのRCTが採用されています。
じつは、鍼灸のRCTは日本が初となります。1962年に木下晴都が始めて世界に先駆けて鍼灸のRCTを行いました。当時は日本が最先端の研究を行っていたのですが、現在では論文数もアメリカやイギリスに差を大きく空けられてしまっています。これは残念なことです。
おわりに
鍼灸は科学的研究や根拠がないわけではありません。昨今では国際疾病分類第11回改訂版(ICD-11)に鍼灸の項目が追加されました。この改訂は30年ぶりの改訂となっています。
また、アメリカでは理学療法士が鍼灸鍼を用いた治療(ドライニードル)が許可されたり、欧州では積極的に鍼治療が保健医療制度に組み込まれたりしています。ドイツでは、腰痛に対する鍼療法は既存の薬物療法や運動療法よりも効果があったことが証明されています。
世界的には鍼療法の研究が盛んになっています。「古臭い」イメージだけで敬遠せずに、試してみてはいかがでしょうか?
参考文献:
[1]建部 陽嗣, 樋川 正仁 (2016). この論文をさがす論文から読み解く科学的知見 鍼灸ワールドコラム(第71回)激増する鍼研究の英語論文 : 日本は世界の潮流に乗り遅れた. 医道の日本76(4): 142-144