ツボをどうやって選ぶか?これには個々の流派によって、しっかりとした規則があるわけですが、個別に一つ一つ書いていくには深すぎるため、私では少し役不足(あらゆる流派に精通しているわけではない)ですので、今回は簡単な考え方だけを書いていきたいと思います。
ツボは361穴+αなわけですが、このαの部分に「阿是穴(あぜいけつ)」という概念があります。この聞きなれない「阿是穴」ですが、これは反応点などといって、「圧痛がある」とか「触ったら汗をかいてる」とか「ぺこぺこしてる」とか「筋腹だから」とか「固いものがあるから」とか理由は何にせよ術者がここに刺したいと思った所がこの「阿是穴」となります。そのため、名前の付いたツボ以上にツボ選びは実に自由度が高いわけです。変な話、経絡もツボの場所も名前もわからないけれど、ここだと思った阿是穴だけで治療が成り立つわけです。
まず最初に一番簡単な局所取穴です。例えば、膝関節症で膝が痛い!といった場合は、膝周りのツボや、痛みの出ているポイント「阿是穴」を使います。そうすることで直接的にアプローチをかけていきます。なになに筋に問題があるとか、なになに神経に問題があるから、直接刺激しよう!とかもこの方法を取ります。
次に遠隔取穴。ツボといっても、経絡との関係は切っても切れないわけです。例えるなら、経絡は鉄道の線路、ツボは駅となります。この線路に属している駅は同じような系統(属性)になっており、通過する部位に対して効果を発揮します。例えば、「合谷(ごうこく)」というツボが手の甲、母指球筋のところにあるのですが、大腸経という経絡に所属しているため、この経絡の通過する(対側)顔面部に対し効果を発揮します。例えば、右側の顔面神経麻痺には左手の合谷を取るなどです。目的は顔だけれども、手のツボを取る、遠隔取穴です。
次に弁証取穴となっていきます。弁証とは、東洋医学的な病証(なになに証=体質)を判断することです。その証にあったツボを取っていきます。例えば、腰が痛く、足腰も弱い、冷えがでて・・・などは「腎」と関係がある証となるため、内くるぶしのところにある「太渓(たいけい)」などを使います。「腎」の原穴である「太渓」に「補法(力を補ってあげる方法)」を行うことによって体質改善を図ります。
最後は経験取穴です。この症状にはこれ!的な豆知識的なツボを使います。例えば、脱肛などには、ふくらはぎの筋肉と腱の接合部にある「承山(しょうざん)」などを使い、気を持ち上げます。こういった経験的な取穴方法もあります。現代的に言えば、EBM(論文などで発表されている臨床研究結果)に基づいたツボの効果(俗にいう穴性)もこれにあたります。
教科書的なツボの選び方は以下、
1)局所取穴
2)遠隔取穴
3)弁証取穴
4)経験取穴
となります。
ただこれは教科書的なツボ選びですから、鍼灸師の先生によって治療方法もだいぶ違ってきます。私自身も悩んだ時には、基本に立ち返るようにしています。また、鍼灸学校をでたばかりで、どうやるべきか悩んでいる場合も一度こういった考えを思い出してみるのも一つの方法かなと思います。逆に利用者さんにとっては、術者の先生が果たしてどんな考え方でツボを選んでいるのかな?と考えてみるのも面白いかもしれません。