top of page

鍼灸治療における標治療(対症療法)と本治療(根本治療)の考え方について

鍼灸治療では、現代医療と同じように、「標治療(対症療法)」と「本治療(根本治療)」という考え方があります。「体質改善には鍼灸治療がよい。」「現代医療(西洋医学)では対症治療しかしない。」「本治療できてこそ真の治療家」「対症療法は腕がない人がやること」など様々な意見が届きますが、実際のところ「標治療(対症療法)」と「本治療(根本治療)」って一体なんでしょうか?

 

まず初めに、「標治療(対症療法)」と「本治療(根本治療)」の考え方ですが、治療方法をアレコレ考える前に、まずは、患者さん個々の症状を診ていかなければいけません。治療の原則は、診断→治療方針→治療→etcです。鍼灸治療現場では、基本的に来院される患者さんに病名がついていないことはほぼありません。また、医師の診断の元で診断が下っていない場合は、積極的に病院の受診をすすめます。

 

問診にて症状や、病名を聞いていると、「これは難しいな」であったり、「これは著効しやすいだろうな」ということが大体わかります。そのため、症状や状態によって、出来ることが変わってきます。治療をする側としては、完治まで持っていきたい気持ちはありますが、治ることはないだろうという場合も十分にあるわけです。そういった場合は、必然的に症状を抑えたり、痛みをコントロールしたりする「標治療(対症療法)」中心になっていきます。けっして鍼灸だから本治療に優れているとか、現代医療は対症療法しかできないというわけではありません。出来ないものは出来ないのです。お手上げな例もあります。

 

逆にいうと、短期間で改善が見込めるであろう「筋肉痛(遅発性筋痛症)」などであれば、筋血流量をあげる施術は「標治療(対症療法)」であるといえるし、結果治るわけなので「本治療(根本治療)」とも言えます。治療は最善を尽くすことがベストであり、治療方法が「本か標」かということは、あまり重要ではありません。

 

膝関節症などの退行性病変などは、基本的に、加齢が原因となります。例えば、手術を希望せず、疼痛管理などで鍼灸治療を希望される場合、治療方針は症状抑制によるQOL(生活の質)の改善となります。定期的な通院が必要となる場合が多い印象です。通院頻度ですが、症状によって週数回~数週間に1回など違います。中には、痛みがない状態を目標に、高頻度で通院される方もいますし、その逆の方もいます。患者さん個々の治療目標(エンドポイント)によっても変わります。

 

もし、先生の治療方針がわかりづらいとか、納得できない場合は、直接相談してみてはいかがでしょうか?患者さんご自身では治りやすいと思っていても、専門家的には治癒は難しい場合もあります。また、治療効果が数日しか続かず、効果がないと思った場合も、じつは数日も効いているといった考え方が出来ます。その場合は、一週間に1回の治療頻度では不十分ということが言えます。再度、治療目標を検討し、計画を組みなおす必要があります。症状や状態によって同じ病気でも全く違ってくるわけです。

 

今回は、誤解を受けやすい「標治療(対症療法)」と「本治療(根本治療)」という考え方について述べました。少しでも、理解に役立てれば幸いです。

最新記事

すべて表示

末梢性顔面神経麻痺において、「単なる神経の機能不全による神経麻痺」なのか、「神経断裂が生じている神経麻痺」なのかでは、治療に対する考え方が大きくことなります。主な臨床症状はどちらも「顔面神経の損傷による表情筋の運動麻痺」ですが、実は性質が大きく異なります。 末梢性顔面神経麻痺の予後判定にはENoG検査が用いられます。これは、非麻痺側と麻痺側を比較し、「神経の活きている割合」を客観的に調べる方法です

末梢性顔面神経麻痺の鍼治療において、麻痺からの回復自体をサポートすることはもちろんですが、表情筋の拘縮等の後遺症を起こさないようにすることも治療目的の一つです。当院では、必要に応じたセルフケアの指導(後遺症予防)を行っています。ただし、すべての症例において、一回二回の施術で劇的に麻痺が改善するというわけではありません。中等症・重症例の場合は動きが出てくるまでに、数カ月掛かることがあります。 人によ

末梢性顔面神経麻痺ではENog検査(誘発筋電図検査、客観評価)と柳原法(表情をつくってもらいながら程度を観察して調べる方法、主観評価)で主に評価を行います。顔面神経麻痺発症から徐々に機能が失われていき、一週間過ぎた辺りがピークとなります。ピークに合わせてENog検査を行い、生きている神経がどの程度か?を評価します。10日~14日程度に行ったENog検査の数値は信頼性が高いと言われています。 末梢性

bottom of page