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鍼灸院や鍼灸療法に辿りつくことがゴールではありません。

鍼灸療法に対する誤解

「鍼灸療法」は、伝統療法に位置付けられていられてはいますが、日本人にとっては馴染みがあるようでない。そして、なかなか正しく理解されていないというのが現実です。とくに「東洋医学」という名前があたかも「魔法」や「なにか霊的なパワー」のように捉えられている節があるように思います。


鍼灸療法は東洋医学の一つ、伝統医学の一つ、相補代替医療(現代医学を補うその他療法)の一つと分類されていますが、どのカテゴリーに分けられて呼ばれても、鍼灸療法自体の本質は変わりません。逆に言うと、リハビリ室などで行う機械をや器具を使う温熱療法や電気療法は「物療(物理療法)」と呼ばれていますが、鍼灸もこの「物療」の一つに過ぎません。


そのため、医学的な常識をはるかに超えた効果というものは起こりえません。


しかし、「医学的な常識を超えた効果がない=意味が無い」というわけでもありません。2008年にドイツで腰痛患者に対して行われた研究では、その他従来の治療方法より鍼灸の方が優れていることがわかり、医療保険制度に積極導入されるに至ったといった事例も存在します。


正しい認識のもと、必要に応じて鍼灸療法を取り入れることは非常に有用です。


鍼灸療法を受ける人の大半は、、、

(健康保険利用時に必要な)鍼灸の同意書文言「~同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、保険者は保険医による適当な治療手段のないものとし療養費の支給対象として差し支えないもの~」が示すように、日本における鍼灸治療は、標準治療で効果のないものに対し行うものという考えが強いように思います。


そのため、ほとんどの場合、慢性的な疾病に中長期的に悩まされたあとに鍼灸院の門を叩きます。人によっては、大小さまざまな医療機関を回ったにあとにたどり着かれます。そして、「一回でどうにかなりませんか?」という質問をされます。


前述したとおり、鍼灸療法は魔法でもなんでもありません。即効性がある場合もありますが「罹患している疾病の程度」であったり「患者さん自身の状態や体質(年齢など)」によって経過は全く違います。とくに慢性的な頑固な症状や、進行性の疾患、難治性の疾患が一回(ほんの数秒~数分)でよくなることは、ほとんどありません。


鍼灸療法はしっかり取り組むことによって本来の効果が期待できます(全員が100%完治するという意味ではありません)。鍼灸療法も正しく利用しなければ本来の効果はありません。


施術1クールの意味

大学院時代に所属していた天津中医薬大学第一付属病院の国際リハビリセンター(中国最大の鍼灸臨床センター)の1クールは14回となっていました。同病院鍼灸科への来院割合のほとんどが脳卒中患者でした。大体週4回施術を受けるとすると、1クールは一ヶ月程度となります。


1クールと聞くと、「1クールで完治まで持っていける回数かどうか?」という考えをもつかもしれません。しかし、この1クールという考えは、「継続すべき最低限の回数」という意味です。1クール消化した後は、再度1クール継続して、、、といった考えが基本です。


臨床研究でも、3ヶ月以上を対象にする場合が多いため、3ヶ月は通院すべきだ。というのが個人的な考えです。人によっては、慢性疾患で悩んでいたが鍼を継続して経過が良好になったという例も多々あります。


もちろん、3ヶ月以上の施術期間が考えられる五十肩や進行性疾患や変形性脊椎症など退行性病変は忍耐強く経過を観察しなければいけません。また、症状の程度や、体質などの個人差も考慮しなければいけません。


さいごに

もしどんな症状(病気)に対しても鍼一本だけで良好な成績(100%完治)を上げられるのであれば、一回3000~10000円程度の施術料ですむはずがありません。


鍼灸療法に魅力を感じた、、、鍼灸療法は効果があると思う、、、標準治療では効果がなかったから、、、理由は様々だと思いますが、「施術を受けること=ゴール」だとは思わずに、「施術を受けること=新たな取り組みのスタート」と気持ちを切り替えて「ゴール=設定した治療目標」に向かって取り組んでみてはいかがでしょうか?

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