我々は、加齢とともに血管の弾力性が失われ、「高血圧」になる確率が上がっていきます。また、糖尿病を罹患している場合は、「高血圧」のリスクが上がっていきます。
動脈硬化による高血圧は「脳卒中」や、「心筋梗塞」などの心血管疾患を引き起こす原因となるため、管理が必要となります。血にまつわる「血圧」「血糖」「脂質」「血小板」の管理が未病を防ぐ上で重要だ!とよく言われます。
よく、「鍼灸は高血圧に効果があるか?」と質問されます。「まず効果があるかどうか?」「鍼灸で高血圧をコントロールできるか?」など様々です。
まず効果についてですが、鍼治療では「短期的な降圧効果は期待できる」と言えます。鍼刺激によって、「圧受容器反射」を引き起こし、瞬間的に血圧を下げることは十分に可能だからです。ツボで言えば、首にある「人迎穴(じんげい)」が該当します。この場所は、総頚動脈の拍動部に位置しており、刺鍼を行うと、鍼先に血管の拍動を感じることができます。鍼の侵害刺激によって人体の調整機構が働き、血圧を下げるといった作用が生まれます。
しかし、この反射は、一時的にしか起こりません。刺鍼直後は血圧が下がったとしても、一定時間経過後には、もとの血圧値に戻ってしまいます。血圧は出来るだけ正常範囲内に収めておく必要があります。そのため、一時的な反射による降圧作用は、臨床的にはほとんど使い物にならないといってもよいでしょう。そのため、常日頃から高血圧の場合(加齢などによる動脈硬化)は、鍼によるコントロールはまず難しいといえます。では果してどのような場合、コントロールが可能になるのでしょうか?
例えば、ストレスで交感神経が優位になっていて、「不眠」や「頭痛」「高血圧」「いらいら」を引き起こしているような場合は、十分に改善が望めます。鍼治療でリラックスした状態になれば、血圧が正常範囲になるはずです(基礎疾患がない場合のみ)。自律神経失調症や更年期障害による「血圧上昇」や「頭痛」に対し、鍼治療が効く機序は上記の理由のとおりです。
加齢に伴う動脈硬化による高血圧などは、医師の投薬による管理が第一選択となります。鍼治療では「高血圧」は保険適用外となるため、上記の理由と合わせて、医療機関受診(内科)をすすめています。