高齢者に対する中長期的な治療戦略とは?

筋疲労などの急性疼痛に対する治療は、数日~一カ月程度で改善(または治癒)がみられます。しかし、すべての傷病・疾患が急性疼痛と同じ経過をたどるわけではありません。とくに、進行性のもの、加齢に伴うもの(いわゆる慢性疾患)などどちらかと言えば保存療法に近い治療戦力が適当な場合もあります。こういった場合、中長期的な治療戦略を考えなければいけません。


鍼灸あんま療法(三療法)の受療者層は、70歳以上の高齢者層に多いと言われており(矢野忠, 2020)(全体の27.0%)、期待されている役割も依然として高齢者の健康維持と言えるでしょう。こういった中、一定数ですが慢性疾患に対する「治癒目的(いわゆる現実的ではない)」での鍼治療を希望することがあります。私見ですが、多くの場合は、ミスマッチングが生じ脱落(ドロップアウト、自己中断)が起こる印象です。ただし、こういった脱落例は、医療機関や施術所を渡り歩いているドクターショッピングの傾向、治療に対する偏った評価、あまりに早すぎる加療継続可否の判断、過剰な期待を寄せているなどの施術者側の落ち度ではないケースも散見されます。


施術者側からみた治療戦略の考え方は階段状(段階だてられている)にできています。例えば、痛みと言っても「生活の質」に係るものであるか否か?という評価であれば、当然ながら生活を脅かさない方が断然よいわけです。そのため、①何をしていても痛い②何かをしていれば痛くない③安静にしていても痛くないといった具合に分けることもできるわけです。とくに、夜間就寝時の痛みは生活の質を著しく落とすため、まず先に解決が望まれます。また、こういった生活の質が一段階改善されるだけでも治療としては目標を一つクリアしたと言えるわけです。


まずは、生活面において「痛くても気にならない」を目指し治療を行う。クリアできたならば「状態の維持または改善(できれば治癒)」を目指すことが重要です。こういったケアとしての中長期的な治療戦略が高齢者層に対する正しいアプローチであると言えます。そのため、もし完全な治癒のみを目指すのであれば、方法自体が限られてくる(もしくは存在しない)とも言えます。なぜなら、年相応よりも若いことはあっても、決して若返ることはないからです。


臨床において治療満足度が高い層は、客観的に傷病(疾患)・状況を理解し、現在のケアはベスト(最善)であり、状態は治療開始以前よりもモアベター(比較的良い)であると考えている層であると感じています。また、決して治療成績が治癒に近いから満足度が高いわけでもない印象です(いわゆるパーフェクト/完璧な治療を求めているわけではない)。


昨今では、「何でも治します」「一回で改善させます」といった施術所(有資格)や整体(無資格のためそもそもおかしい)の広告が散見されます。こういった間違った「謳い文句」に流されず、中長期的な治療戦略の必要性を理解し、健康を維持していくことが大切です。


参考文献:

[1]矢野忠ら.あん摩マッサージ指圧療法、鍼灸療法に対する 受療者の評価に関する調査(前編).医道の日本. 79(6), 217-228, 2020-06


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