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WHOの認める鍼の効果とその誤解

WHOの認める鍼の効果?への疑問

よく「鍼はWHOも効果を認めている」という広告を目にします。「WHOが〇〇という疾患に対して効果があると謳っているから、鍼治療はぜひ当院で!」という形です。たしかにWHOが認めているのだからすごい!WHOが認めているのだから鍼をすれば効果がある!というように感じますが、、、鍼灸師として、長らくこの広告に違和感があったため、調べてみることにしました。


素朴な疑問:

  1. WHOが効果を謳っているわりには、臨床上あまり見かけないものが多い

  2. WHOが効果を謳っているわりには、根拠(エビデンス)をみかけない?

  3. WHOが効果を謳っていれば、どの鍼灸院(鍼灸師)でもよいのか?


WHOが認めた適応症リスト(1979)

  1. 上気道4疾患:急性副鼻腔炎・急性鼻炎・感冒・急性扁桃炎

  2. 呼吸器系3疾患:急性気管支炎・小児気管支喘息および気管支喘息(合併症のない患者に最も有効)

  3. 目の障害4疾患:急性結膜炎・中心性網膜炎・小児の近視・合併症のない白内障

  4. 口の障害5疾患:歯痛・抜歯後の疼痛・歯肉炎・急性咽頭炎および慢性咽頭炎

  5. 胃腸障害15疾患:食道痙攣および噴門痙攣・しゃっくり・胃下垂・急性胃炎および慢性胃炎・胃酸過多・慢性十二指腸潰瘍(疼痛の緩和)・合併症のない急性十二指腸潰瘍・急性腸炎および慢性腸炎・急性細菌性赤痢・便秘・下痢・麻痺性イレウス

  6. 神経系および筋骨格障害17疾患:頭痛および片頭痛・三叉神経痛・初期(6か月以内)の顔面麻痺・脳卒中発作後の麻痺・末梢性ニューロパチー・初期(6か月以内)のポリオ後遺症・メニエール病・神経性膀胱生涯・夜尿症・肋間神経痛・頸腕症候群・五十肩・テニス肘・坐骨神経痛・腰痛・変形性関節症

第10回『WHO(世界保健機関)が定めた鍼灸の適応症』<赤門教職員コラムリレー> | 仙台の鍼灸師・柔道整復師・指圧師養成学校|赤門鍼灸柔整専門学校 (akamon.ac.jp)


森ノ宮医療大学によると、、、

  • ”このリストには、注釈として次のようなコメントが付されています:「このリストは臨床経験にもとづくものであり、必ずしも対照群を置いた臨床試験にもとづくものではない;さらに、特定の疾患を含めたのは、鍼の有効性の範囲を示すことを意図としているのではない」。つまり、リストに列挙されたのは鍼の効果が「WHOによって認められた」あるいは「研究によって証明された」といった症状・疾患ではないのです。”

鍼の適応症とWHO | MUMSAIC's Opinion | 森ノ宮医療大学 鍼灸情報センター


赤門鍼灸柔整専門学校によると、、、

  • ”これには注釈として「このリストは臨床経験に基づくものであって、必ずしも対照群を置いた臨床試験に基づくものではない。また、特定の疾患を含めたことは、鍼の有効性の範囲を示すことを意図するものでもない」という言い訳めいた内容をわざわざ付帯している。さらには、このセミナーで合意が得られた疾患数は30疾患であったが、その後の中国による強引な働きかけによって、公表時には48疾患にまで膨れ上がっていたのである。”

第10回『WHO(世界保健機関)が定めた鍼灸の適応症』<赤門教職員コラムリレー> | 仙台の鍼灸師・柔道整復師・指圧師養成学校|赤門鍼灸柔整専門学校 (akamon.ac.jp)


上記の記事から、「対照群を置いた臨床試験ではない≠現代的研究手法」による1979年(30年以上前)における暫定的なリストであることがわかります。そのため、「はっきりと有効性が確認されたものではない」ことがわかります。また、30年以上前のリストだけで鍼灸の適応範囲や有効性を主張するにはいささか無理があるということがわかると思います。


効果がある方法が明記されていなければ意味がない

実は、WHOがいくら効果があるよと謳っていても、WHOの推奨する方法でなければ効果があるものとは言えません。鍼施術と言っても、ただ単に鍼を刺しているわけではないからです。「効果があったとしても、どんな方法を使ったのか?」という素朴な疑問に答えられなければいけません(再現性の問題)。


鍼をする上でのポイント:

  1. どのような人に:年齢は?疾患は?

  2. どのような鍼を:材質は?太さは?形状は?

  3. どのような場所に:解剖学的な位置は?どのツボ?

  4. どのような刺激を:深さは?手技は?方向は?

  5. どの程度行ったか?:1回の時間はどれくらい?頻度は?期間は?


そのため、「これだけの疾患に効果があるとWHOが言ってるよ!だからリスト通りの疾患をお持ちの方はぜひ当院で!」という広告を鵜吞みにして安易に鍼を受けることはおすすめしません。


さいごに

たしかに、「世界的にすごい機関が言っているすごいことはすごい」ことのように見えますが、「WHOが言っているから何でもOK理論」は、単なる広告にすぎません。WHOのリストを掲げている鍼灸院が、リスト上全ての疾患(48疾患)に対応できるという意味ではありません。


「餅は餅屋」ではないですが、はり・きゅうに関しては「はり・きゅう」を専門にしている施術所の方が信頼性が高い印象です。また、施術所や鍼灸師によっても「内科領域が得意な鍼灸師」や「整形外科疾患が得意な鍼灸師」が存在します。ご自身の症状に合う鍼灸院を探すことをおすすめしています。


なお、当院であれば「脳卒中後遺症・神経変性疾患(パーキンソン病など)・疼痛領域(肩こり・腰痛・神経痛など)」が得意分野です。「婦人科疾患」や「骨折・打撲(急性外傷)」などは希望に合わせて他院を紹介しています。

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鍼をすると、自律神経の副交感神経が優位になり「リラックス状態」になると言われています。そのため、鍼を刺したままベッドで安静にしている「置鍼・留鍼(ちしん・りゅうしん)」の最中には眠ってしまう方が多い印象です。よくカーテンの向こうからイビキが聞こえてきます。 「鍼を刺したままで痛くはないのか?」という質問を受けることがありますが、鍼が刺さった後は「するどい痛み」が持続することはありません。少しずーん

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