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  • 執筆者の写真三焦はり院

クリーンニードルテクニック(CNT:Clean Needle Technipue)の意義

東アジア圏だけでなくアメリカでも鍼灸治療が注目されているようです。アメリカの鍼灸免許の要点に、「クリーンニードルテクニック(CNT:Clean Needle Technipue)」の習得があります。これは、言葉のとおり、いかに衛生的に鍼灸治療が出来るかどうか?といったものです。

 

クリーンニードルテクニックは、管鍼を使用します。ここまでは日本と変わりません。しかし管鍼を持つ左手が患部に触れてはいけないため、管鍼の下側は持ちません。この状態だと安定感に欠きますが、患部には管と鍼先(滅菌済み)しか触れていません。管をセットした状態から、鍼の頭(上側)を上から右手の人差し指でポンポンと叩いて刺入したあと、管を上部から引き抜きます。

 

このあと、日本式では左手を患部に置いて、人指し指と親指で鍼を固定し、右手で持った鍼を押しこんでいきます。しかし、クリーンニードルではNGとなります。消毒後、患部(鍼にも)には一切触れてはいけないわけですから、人差し指と親指は患部から数センチ離れた位置に置いて、皮膚を外側に引っ張ります。そうすることによって、鍼が刺しやすくなるのです。その状態で、右手で持った鍼を刺入していきます。クリーンニードルの一連の動作は消毒から抜針までありますので、もっと複雑です。今回は刺鍼だけを切り取りました。

  

アメリカに関わらず、医療業界において衛生観念というもは、非常に重要です。特に、鍼灸鍼を体内に刺入していく我々の業態は、当然出血も伴いますので、利用者さんへの感染防止や術者への感染も含め、対策を立てていく必要があります。現在の日本においても、衛生教育は進んでいます。現在では、ほとんどの治療院がディスポ(一回使い切り)の鍼を使用していますし、指サックやグローブ着用の院も増えています。市場には鍼体(鍼の体に入っていく部分)を覆うカバーのようなアイテムもあります。

 

古典派では、鍼を抜いた後、(瀉法をする際)孔を閉じないように、消毒をしない場合もあったり、人間本来の免疫力があるから消毒は不要という考えの先生もいるかもしれません。また、操作の面では、指サックやグローブを使用すると感覚が変わってきてしまうなどの懸念もあります。しかし我々は衛生管理はできるかぎり徹底して行う必要があります。手技の趣旨にそぐわない場合も、出来る限り代替案を検討し衛生管理に努めるべきではないかと考えています。院内で感染などが起きてしまったら、本末転倒です。利用者さんの都合を考える上で、術者の都合が最優先にされてはいけないのです。

 

クリーンニードルテクニックと仰々しい名前ですが、術者が徹底した衛生管理を習得すると同時に、衛生管理の意味を考える上では非常によい術式となります。興味のある方は、ユーチューブなどで「clean needle technipue」と検索してみてください。

 

もちろん当院でも衛生管理は行っています。また鍼皿から鍼・綿花にいたるまでディスポとなっていますのでご安心ください。

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