top of page
  • 執筆者の写真三焦はり院

鍼刺入時に痛みを感じやすい皮膚と筋肉の状態とは?

皮膚や筋肉の状態によっては痛みを強く感じることがある

鍼がとても痛いという方と痛くないという方がいます。痛みの感じ方は個人差があるためになかなか評価しづらいものです。ただ、私の経験上痛みが強くなるな、、、と感じる方はいらっしゃいます。ではどのような方は痛みを強く感じやすいのでしょうか?


一般的には、本来の性格に基づくもの、例えば非常に神経質であったり、ストレスを感じやすい方(もしくは痛みなどでストレスが強い)は痛みを感じやすい傾向にあります。大方の方がなるほどと思うところではありますが、、、そのほかに皮膚や筋肉の状況によっても痛みの強さが変わる傾向にあります。


どのような状態だと痛みを感じやすいか?

皮膚が薄くて、弾力があって、柔らかくて、皺が少なくて、筋緊張が低い方は痛みが軽いはずです。逆にいうと皮膚が厚くて、たるんでいて、固くて、皺が多くて、筋緊張が強い方は刺入痛が発生しやすい傾向にあります。


痛みが少ない方の局所の状態

  • 薄い:抵抗が少ない、貫くまでに時間がかからない

  • 弾力がある:固定力があり、鍼先を押し返すため、少ない力ですむ

  • 柔らかい:少ない力で皮下に入る

  • 皺がすくない:力が分散しない、刺入しやすい

  • 筋緊張が少ない:抵抗が少ない


痛みが強い方の局所の状態

  • 厚い:抵抗が強い、貫くまでに時間がかかる

  • たるんでいる:固定力がなく動いてしまうため、より強い力が必要

  • 固い:より強い力が必要

  • 皺が多い:力が分散しやすい、刺入しづらい

  • 筋緊張が強い:抵抗が強い


なかには、皮膚は柔らかいけれど筋緊張が強いであったり、その逆もありますが、一つでもネガティブな要素が増えると、増えれば増えるだけ痛みが強い傾向になります。


こういう時はどうする?

鍼術のなかには揉燃(じゅうねん、いわゆる揉み解し)という手技があり、鍼刺入の合図を送ったり、緊張を緩和したりといった目的で施術前に施すことがあります。ただし、この手技だけでは限界があり、完全に刺入痛が消えるわけではありません。また、皮膚を貫く時間をより短くする速刺法や、管(ガイド)を使ってゆっくり刺入する管鍼法がありますが、これも相対的に刺入痛を軽減しやすいというだけで完全に刺入痛が消えるわけではありません。


皮膚の状態は個人差があるので中々どうしようもありませんが、施術を重ねていき筋肉が正常の固さに戻ると、刺入痛を(相対的に)感じなくなることがあります。考え方としては、痛みが強い時は「筋緊張が強い≒局所の状態が悪い」、痛みが弱い時は「筋緊張が弱い≒局所の状態が良い」とも言えるでしょう。


そのため、筋肉の状態が悪くなってから鍼を受けるよりも、早期からケアを行った方が痛みも軽くなるはずです。


鍼灸師の心情

触診や施術中に、「これ痛いだろうな、、、」と内心思うこともあります。しかし、適切な施術を行わなければ十分な効果がない可能性が高い(痛くない≠よい鍼灸師)ため、しっかりとした線引きを決めながら施術に当たっています。とくに、誤解が生じると患者さんの治療意欲の低下や施術者への不信感に繋がってしまうため、インフォームドコンセント(説明)を適宜おこなうよう心がけています。もちろん、初回は本数や刺激量を抑えるようにしていきます。また、施術中の痛みが強い方の中には、鍼感(ズーンと重いなど)が残りやすい場合もあるため、施術後に適宜確認を行っています。


鍼はどうしても痛いものだが、、、

鍼を皮下に刺入する以上はどうしても痛みを伴うものです。しかし、「良薬は口に苦し」ではありませんが、苦いからと言ってダメというわけではありません。昨今アメリカでは、理学療法士に鍼(dry needling、ドライニ―ドリング)の使用が認められたり、30年ぶりに改訂されるICD(国際統計分類)に鍼灸の項目が増えたりと、世界的に普及が進んでいます。そして、日本においては特定6傷病が変更保険利用対象(療養費支給対象)に認められています(特定6傷病にしか効果がないわけではない)。また、平成31年1月1日より受領委任制度が導入されました。


ドライニ―ドリング(下記より抜粋):

  • ドライニードルとは、細い糸状の鍼を用いて皮膚に刺入し、下層の筋膜のトリガーポイント、筋肉、結合組織を刺激し、神経筋骨格系の疼痛と運動障害のマネジメントを行う、技術が必要な治療的介入である。ドライニードルは、骨格筋、筋膜、結合組織の機能障害の治療に用いられ、頑固な末梢の侵害受容入力を減少させ、身体の構造と機能の障害を回復させ、活動と参加を高める技術である。


鍼灸の特定6傷病(下記より抜粋):

次の病気については鍼灸が健康保険でうけられます。

  1. 神経痛…例えば坐骨神経痛など。

  2. リウマチ…慢性で各関節が腫れて痛むもの。

  3. 腰痛症 …慢性の腰痛。

  4. 五十肩…肩の関節が痛く腕が挙がらないもの。

  5. 頚腕症候群…頚から肩、腕にかけてシビレ痛むもの。

  6. 頚椎捻挫後遺症…むち打ち症などの後遺症。

その他これらに類似する疾患など。


受領委任制度:

  • 施術者等が患者等に代わって療養費の支給申請を行う制度


さいごに

多くの方は標準治療(医療機関での治療)を受けた後に、「なにか他に方法はないか?」と鍼治療に辿りつく場合がほとんどだと思います。そういったストレスが強い状況の中、施術中に痛みを感じるとどうしても鍼灸師の腕が悪いのではないか?と考えがちです。しかし、実は痛みを感じる原因は様々であり、決して施術者の腕だけではないことがわかると思います。また、疑問を感じた時、まずは施術者に理由を聞いてみましょう。


参考になれば幸いです。

最新記事

すべて表示

局所における鍼の持続効果の話

著者は、「鍼の持続効果」に関して、度々質問を受けることがあります。実は、「鍼を刺すこと自体」には、数週間、数カ月と言った中長期的な作用はありません。「直接的な作用」は、刺鍼直後~数時間程度と考えます。「なんだ鍼はその程度しか効かないのか、、、」と感じる方もいるかもしれませんが、厳密には、この「直接的な作用」と「副次的に生じる持続効果」については分けて考えなくてはなりません。 例えば、局所麻酔剤を痛

ボツリヌス毒素・ミラーバイオフィードバック療法併用に関する研究の紹介

前回の記事(やっぱりミラーバイオフィードバック法は大事 (sanshou-hari.com))で「ミラーバイオフィードバック法は大切ですよ!」という話をしました。ミラーバイオフィードバック法は、鏡を見ながら顔を動かす方法ですが、単なる表情筋のトレーニングではなく、中枢(脳)での運動ネットワークの再構築を目標にしたリハビリです。 本稿では、関連する研究として、高橋(2014)による「ボツリヌス毒素・

やっぱりミラーバイオフィードバック法は大事

本稿では、顔面神経麻痺のリハビリの一つである「ミラーバイオフィードバック法」に触れていきたいと思います。 ミラーバイオフィードバック法とは、「鏡を見ながら顔を動かすリハビリの方法」です。主に、口を横に開く「イー」、口を尖らせる「ウー」、ほっぺたを膨らませる「プー」の三種目を行います。 ミラーバイオフィードバック法の目的は「病的共同運動(口を動かすと目が閉じるなど、後遺症の一つ)の予防」です。そのた

bottom of page