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  • 執筆者の写真三焦はり院

鎮痛薬と鍼と薬物乱用頭痛

鍼療法は高齢者向けのイメージが強いですが、最近は比較的若年層の頭痛や肩こり(頚腕症候群)などに対する需要が高くなっているイメージです。NHKで放送された『東洋医学ホントのチカラ「健康の大問題 解決SP」』の中でも「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛、MOH)」とその鍼療法について触れられており、改めて潜在需要を強く感じました。


第一三共ヘルスケアによると、”「薬剤の使用過多による頭痛」とは、アセトアミノフェンや非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs=Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)などの鎮痛薬、トリプタン、複合鎮痛薬(鎮痛薬とカフェインの合剤など)、エルゴタミン製剤などの薬を常用することで起きてくる頭痛です。(抜粋)”月に10~15日以上飲み続けている場合は要注意と言われており、依存度が挙がると薬物量に反して効き目が持続する時間は減少し、脳は過敏状態となり痛みが増していきます。また、頭痛薬を常用しているのに痛みが取れない場合は二次性頭痛・症候性頭痛(原因が他にある)も考えられるため、すぐに専門医を受診することが大切です。


薬物乱用頭痛の場合は、薬剤性のため減薬がすすめられますが、不安が強い場合は鍼療法の併用もおすすめしています。頭痛薬の副作用を徐々に減らしながら、鍼によって痛みや神経の過敏性を抑えていくという考え方です。鍼療法は、副作用がほとんどなく、薬物を使用するわけではないため薬効を邪魔したり副作用を強くすることもありません。血行促進による鎮痛効果(循環改善)、自律神経調節による緊張緩和(リラックス効果)、下降性疼痛抑制系の賦活(中枢性鎮痛作用、脳内モルヒネ様物質の分泌、脳内麻薬による作用)などによって頭痛を和らげる手助けとなります。


また、薬物乱用頭痛が起きていない場合でも、比較的使用過多の傾向にある場合にもおすすめです。実際に、これ以上内服を続けていくと怖いという考えから鍼療法の併用を検討される方もいらっしゃいます。


鍼療法の目安ですが、当院では最初は週1~2回から開始をして、痛みの程度に合わせて間隔を調整しています。一般的には、症状緩和にあわせて通院間隔が伸びていき、徐々に離脱していくことが理想です。また、疲れやストレスが溜まると症状が出やすいという方は、定期的に通院する方がよい場合もあります。


鍼療法は何かと「使い方がよくわからない、、、」「どんな時に受療すればよいかわからない、、、」「存在意義がわからない、、、」と言われることがありますが、こういった相補代替医療(西洋医学・現代医学を補う位置付けにある医療)の一つとして活用することが可能です。とくに、他に選択肢がない場合は鍼療法もぜひ検討してみて下さい。

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