top of page
  • 執筆者の写真三焦はり院

麻痺した表情筋を強引に回復させない治療戦略

末梢性顔面神経麻痺に対する治療戦略ですが、実は「強引に治そうとすることは避ける方針」で取り組みます。矛盾するようですが、「顔面神経の活動を活発にするな」ということです。よく耳にする「電気を流すな」「顔を強く動かすな」というアドバイスも、「顔面神経の活動を活発にするな。」と同じ意味です。


顔面神経の活動を活発にすると、神経自体の回復は促進されますが、顔面神経の枝は不自然なまでに元気に伸びていきます。この「元気すぎる」という点が、顔面神経の特徴であり、神経の混線によって生じる病的共同運動(後遺症)を引き起こす原因になると言われています。


一般的に「神経損傷の度合い」と「治療に掛かる時間」は比例すると言われているため、神経損傷の度合いが大きければ、すぐに回復することはありません。もちろん、通電等を行えば、早期から表情筋が動くようになると言われていましたが、より高い確率で後遺症が出現・残存します(通電は原則禁忌)。そのため、早期から表情筋が動けばよいといった後遺症軽視の治療戦略は不適切と言えるわけです。


ある程度の加療期間を鑑みると、患者さんにとって一定の忍耐が必要となりますが、後から後遺症が必要以上に強く出てしまうことを避けるほうが、結果として患者さんの負担を軽減させるはずです。


鍼灸師は、トータル治療回数の多い少ない(通院期間等)で評価されがちですが、末梢性顔面神経麻痺においては、必ずしも「1回で治った」「すぐよくなった」と評価を頂けることが大切だとは思っていません。逆に数回の施術で治るような症例は、そもそも軽症例の可能性を含み、鍼灸師の腕とはあまり関係ないこともあるわけです。治療戦略で重要なことは、「より自然な形での回復を助け、出来る限り後遺症を出さずに、回復の可能性を最大まで高めること」この一点に集約されます。


ただし、「強引に回復させないようにする」とは言っても、単に自然治癒に任せて放置するというわけではありません。適切なケアを適切な時期に適切な量・質で行うことが大切です。回復の土壌を整えるイメージです。そうすることによって、表情筋の動きが立ち上がってきた後、回復過程に差が生まれてくると考えています。もちろん、回復過程が良好であれば、結果として「想定よりも早くよくなったね」となるわけです。

最新記事

すべて表示

嚥下困難や構音障害に対する鍼

脳卒中後遺症(脳梗塞、脳出血)などによって「嚥下困難(呑み込めない)」や「構音障害「(舌が回らない)」が生じることがあります。「嚥下困難」や「構音障害」などの舌や喉の運動機能障害は、誤嚥性肺炎のリスクが上がるため、注意が必要とされています。実は、こういった随伴症状に対しても鍼は有効といわれています。 当院では、嚥下困難や構音障害がある場合は、「廉泉(れんせん)」というツボを使っています。教科書どお

パーキンソン病は鍼で治るか

はじめに 最近、NHKの鍼療法に関する番組の影響か、「パーキンソン病に対して鍼はどうか?」と言った関心の声があるようです。本稿では、パーキンソン病と鍼療法について述べていきたいと思います。 パーキンソン病は治らない パーキンソン病は、進行性の神経変性疾患のため、基本的に治ることはありません。もちろん、鍼をしたからと言って治るわけではありません。「鍼でパーキンソン病は治らない。」という話をすると、「

[お知らせ]令和6年度療養費改定(6/1~)

令和6年度療養費改定が6月1日より行われます。 主な変更点は以下の通りです。 1)療養費 〇初検料 旧)1780円 新)1950円 〇施術料 旧)1550円 新)1610円

Comments


Commenting has been turned off.
bottom of page