五十肩(肩関節周囲炎)
<病気のこと>

五十肩とは?
1)発症原因
五十肩は腱板や関節包周囲に炎症がおこる「肩関節周囲炎」と呼ばれるものです。五十肩と呼ばれるように加齢に伴って発症すると考えられています。また、関節可動域が凍ってしまったかのように動かなくなることから「凍結肩(フローズンショルダー)」とも言われています。もちろん、五十肩といっても60代以降も発症します。
2)特徴的な症状
① 肩関節周囲の痛み:関節周囲の炎症による
② 夜間痛:夜寝ている時に痛みが強くなる
③ 関節可動域制限:腕が挙がらない、肩がまわせない、凍結肩
④ 経過が長い:数か月以上の経過を辿ります
3)注意
手が挙がらないが、誰かに支えてもらえれば手が挙がるような場合、「腱板断裂」も考えられます。また、関節可動域制限がなく、鍼などの加療によって症状がすぐ治まるような場合は、「筋膜性疼痛症候群」や「単なる筋疲労」「頚腕症候群」なども考えられます。
変形性膝関節症の経過や段階
1)炎症期(数日~数週間)
肩関節周囲に炎症が起き、夜間痛や安静時痛が生じ、痛みのため動かせない。
2)拘縮期(6か月~1年)
炎症が治まってくるとともに痛みは少なくなってくるが、動かさなかった関節自体にこわばりが生じたり、炎症による癒着が生じることによって可動域制限が生じる。
3)回復期(数か月~数年)
適切なケアを行うことによって痛みや関節可動域が改善し、じょじょに回復してくる。
五十肩のケア
1)薬物療法
ヒアルロン酸注射、痛み止めの内服薬、湿布
2)物理療法
鍼、灸、温熱療法
3)手術療法
麻酔下での癒着の剥離
五十肩
<当院の施術内容>
当院で使用しているツボ
1)主に使用するツボ:
1)肩三針:肩関節周囲。五十肩
2)肩中(けんちゅう):三角筋中央。五十肩
3)肩前(けんぜん):三角筋。五十肩
4)臂臑(ひじゅ):三角筋。五十肩
5)臑兪(じゅゆ):三角筋、棘下筋。五十肩
6)肩貞(けんてい):大円筋。五十肩
7)曲垣(きょくえん):棘上筋。五十肩
8)秉風(へいふう):棘上筋。五十肩
9)天宗(てんそう):棘下筋。五十肩
「血流改善」による鎮痛および可動域改善
鍼のメカニズム
1)局所の血流改善による鎮痛
軟部組織を鍼で刺激することによって血流改善がおこり、痛みがとれやすくなります。また、柔軟性が向上すると可動域自体も改善しやすくなります。
五十肩
<当院の取り組み>
五十肩に対する考え方
1)炎症期
無理に動かさない。痛みを取る方法を早期から極力積極的に行い、悪化させない。炎症期の治療成績が拘縮期以降の予後に大きく影響します。
2)拘縮期以降
痛みを取りながら、固まってしまった関節可動域を拡大させる運動を行います。また、温めることによって痛みを取ったり柔軟性を向上させていきます。
鍼のメリット
1)副作用がない
鍼療法には副作用がほとんどありません。薬物療法や運動療法との相性もよく、相乗効果が望めます。
2)機能回復
鍼による血流改善で痛みの軽減、筋力や柔軟性の回復が起きます。機能改善によって運動療法を行いやすくなります。
五十肩ケアのポイント
1)五十肩はすぐには治らない
「〇〇療法」をすればよく治る!というようなことはありません。最低でも数か月かかると考えて、根気よく治療を続ける必要があります。すぐ治るような場合、もしかしたら五十肩ではないかもしれません。
2)年齢が高い、炎症が強い場合は要注意
年齢と炎症の程度は予後と関係があると言われています。高齢者ほど回復までにかかる時間は長く、炎症が強い場合や関節拘縮が強い場合はより長い時間がかかります。
3)放置すると後遺症の恐れも
以前は自然治癒すると言われていましたが、「治るから」といった理由で放置をしていると関節拘縮が高度となり後遺症が残ることがあります。また、数か月~数年単位で痛みを我慢することも健康上あまりよくありません。
4)早期治療には併療も視野に
一般的に、炎症の程度によって予後が決定されると言われています。そのため、薬物療法などで痛みがコントロールできない場合は、鍼との併療もおすすめしています。なるべく早く炎症や痛みをとることが大切です。
五十肩
<セルフケア>
セルフケアはどうしたらいいか?
1)アイロン体操
アイロンやペットボトルを手に持ち、振り子のようにふって肩関節を動かしていきます。無理に動かそうとせず身体の全体の動きで腕を振ることが大切です。無理なく動かせるため可動域改善に有効です。
2)壁伝い運動
壁の横に立ち、痛い方の腕を壁に沿わせて挙げていきます。挙げづらい場合は、人差し指と中指で壁に触れながら交互に動かし、尺取虫のようにゆっくりと壁を這わせていきます。可動域改善に有効です。