多系統萎縮症

<病気のこと>

 
多系統萎縮症.png

多系統萎縮症とは?

1)発症原因・予後

多系統萎縮症は、①「オリーブ橋小脳萎縮症(olivopontocerebellar atrophy:OPCA)」、②「線条体黒質変性症」、③「シャイ・ドレーガー症候群」と従来区別されてきましたが、進行すると三大症候(小脳性運動失調、パーキソニズム、自律神経障害)が重複してくること、画像診断の所見や組織病理も共通していることから多系統萎縮症と称されるようになりました。50歳以上に多く、加齢に伴う神経の変性が主な原因です。また、進行性のため治ることはありません

2)特徴的な症状

① 小脳性運動失調:酩酊歩行

② パーキソニズム:安静時振戦(ふるえ)、筋固縮、無動・寡動、姿勢反射異常(前かがみ、小刻み歩行)

③ 自律神経障害:起立性低血圧、便秘、不眠、呼吸障害

3)その他の症状

認知機能低下など

4)タイプ

① 多系統萎縮症-小脳型(MSA-C):小脳性運動失調が前面に出るタイプ

② 多系統萎縮症-パーキソニズム型(MSA-P):パーキソニズムが前面に出るタイプ

多系統萎縮症の経過や段階

1)発症から5年程度

対症療法が中心となるが、全経過が比較的長いパーキンソン病と違い比較的進行が早く、発症から約5年で車椅子となる。また、線条体が編成するためパーキンソン治療薬の効果はあまりないと言われています。

2)発症から8年程度

発症から約8年で寝たきりとなり、平均的な罹患期間は9年と言われています。睡眠時無呼吸などの呼吸障害による突然死に注意が必要です。

多系統萎縮症のケア

1)薬物療法

対症療法

2)運動療法

機能訓練による運動機能維持

3)鍼灸・マッサージ

​鍼による症状緩和やマッサージによる拘縮予防​

 

多系統萎縮症

<当院の施術内容>

sanjiao.gif

​「益気調血・扶本培元(全身調整)」による抗老化

当院で​使用しているツボ

1)主に使用するツボ:

​三焦鍼法(さんしょうしんぽう)

1)外関(がいかん):三焦(五臓六腑)を総合的に整える目的で処方 ​

2) 血海(けっかい):血(けつ)を整える目的で処方。 ​

3) 足三里(あしさんり):気を補う目的で処方 ​

4)気海(きかい):下腹部(下焦)を整える目的で処方 ​

5)中脘(ちゅうかん):中腹部(中焦)を整える目的で処方 ​

6)膻中(だんちゅう):胸部(上焦)を整える目的で処方

2)症状に応じて加えるツボ:

1)頭皮鍼震せん区:前頭部のツボ。パーキソニズム

2)廉泉(れんせん):のどのツボ。流涎飲み込みづらい舌のもつれ

3)委中(いちゅう):膝裏のツボ。足が前に出づらい

4)天枢、水道、帰来(てんすう、すいどう、きらい):腹部のツボ。便秘

5)四神総(ししんそう):頭頂部のツボ。精神的な症状

6)八髎穴(はちりょうけつ):仙骨のツボ。泌尿器症状

7)中極、関元(ちゅうきょく、かんげん):下腹部のツボ。泌尿器症状

​特殊鍼法の解説

1)​三焦鍼法

解説:三焦鍼法とは、天津中医薬大学第一付属病院の韓景献教授によって開発されたパーキンソン病や認知症など神経変性疾患に対して有効な鍼灸処方です。韓景献教授の提唱する「三焦気化失調ー老化相関論」に基づき、「益気調血・扶本培元」を目的として開発されました。基礎研究・臨床研究にて効果が裏付けされており、臨床応用されています。

​2)研究動向

翻訳:三焦鍼法のパーキンソン病患者の運動機能と非運動機能改善の可能性が示唆された。中・軽度のパーキンソン病に対して、三焦鍼法は有効な治療手段となりうる可能性が示唆された

参考文献:刘云鹤, 刘阿庆, 贾玉洁, et al. 三焦针法治疗帕金森病的疗效观察[C]// 2013中国针灸学会学术年会——第四届中医药现代化国际科技大会针灸研究与国际化分会. 0.

 

多系統萎縮症

<当院の取り組み>

多系統萎縮症に対する考え方

1)病気をなるべく進行させない

病気の進行をなるべく遅くして、豊かな生活を送れるようにする

2)症状をできるだけ改善させる

​症状を緩和させて、豊かな生活を送れるようにする​

​タイプによる鍼の提案

1)MSA-C

小脳性運動失調が前面に出るタイプには、後頭部や後頚部に鍼を追加していきます。後頭部や後頚部は小脳と近い位置にあるため、刺激によって小脳の血流改善作用があると言われています。

2)MSA-P

パーキソニズムが前面に出るタイプには、パーキンソン病に対する鍼治療に準じ、前頭部の舞踏震顫区に鍼を追加していきます。刺激によって「震え」の症状が軽減されると言われています。

​鍼のメリット

1)副作用がない

鍼療法には副作用がほとんどありません。薬物療法や運動療法との相性もよく、相乗効果が望めます。また、多剤服用による副作用リスクも下げることができます。

2)新しいアプローチ

新しいアプローチを加えることによって更なる症状緩和や進行抑制が期待できます。

3)中枢(脳)への作用

鍼による刺激は、局所だけではなく、中枢(脳)へ作用することがわかっています

4)局所への直接作用

神経や筋肉を直接刺激し、運動機能の改善が期待できます

5)自律神経の機能調節作用

皮膚を介した自律神経反射を利用することによって自律神経症状の改善が期待できます

多系統萎縮症病ケアのポイント

1)比較的進行が早い

パーキンソン病治療薬はあまり効かず、比較的進行が早いことが特徴です。悪くなってから何とかすればよいと考える方がいますが、悪くなった後からのケアでは大幅な改善は望めません。そのため、早期からのケアが重要となります。なるべく悪くさせないという考えが大切です。

2)症状が多岐にわたる

名前のとおり、障害部位は”多系統”に渡り、症状も運動障害だけではなく、認知症状や頻尿・便秘などの泌尿器症状、嚥下障害なども出現するため、ご本人だけではなく家族にとっても負担が大きくなる傾向にあります。そのため、症状緩和や進行抑制は重要となります。

3)運動機能維持

リハビリテーションは残っている運動機能の活用、維持に有効であり積極的に勧め、日常生活も工夫して寝たきりになることを少しでも遅らせることが大切です。

4)睡眠時無呼吸

多系統萎縮症では、息を吸うときに声帯が狭くなる「声帯開大不全」が生じやすいと言われています。また、声帯開大不全は睡眠時無呼吸との関係が指摘されており、睡眠中の突然死につながるとされています。持続的陽圧換気療法(CPAP)や気管切開術が有効とされています。