日本においても、認知症患者さんは増えています。2025年までに団塊世代が後期高齢者(75歳以上)になるため、今後も増え続けていくことが予想されます。
タイムリーなニュースですが、「フランスでは、認知症治療薬(ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミン・メマンチン)が保険適用外に」「アメリカでは認知症治療薬の開発が中止に」なりました。
フランスでは、治療介入の有効性を評価したところ、消化管や循環器、神経系に対する副作用が認められるが、治療効果は十分ではなかったということが2016年の調査でわかりました。そのため、今年の8月から保険適用外になることが決定されました。ようするに、「積極的に治療薬使用を推進すべきではない」というようなニュアンスです。
アメリカでは、大手製薬会社(ファイザー、メルク、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど)がつぎつぎに認知症薬の開発研究分野から撤退しました。莫大な研究費を投入しても、十分な研究成果をあげれず、残念ながら中途打ち切りとなったわけです。ようするに、「認知症状を劇的に改善するような新薬の開発は現状では難しい」といったニュアンスです。
以上のことから、認知症治療は当面頭打ちになったといっても過言ではありません。また、フランスの例のように、再評価の機運が高まれば、世界的に保険適用から外されていく可能性も十分にあるでしょう。
アルツハイマー病は現状では、根治は望めません。そのため、治療=「症状の進行を抑えること」以外望めません。現在使用されている認知症治療薬も根治を目的としたものではありません。
以前もレポートしましたが、「鍼灸治療(三焦鍼法)・漢方治療」はアリセプトに比べて、同等かそれ以上の効果があったとの報告があります。また、軽度から中度の認知症への治療成績や、予防目的での治療介入も良好です。現状では鍼治療や漢方治療でも根治は不可能ですが、認知症治療薬のような副作用といった面では、懸念はほとんどありません。「(認知症ではないけれど)ちょっと忘れっぽいな」といったような状況からでも治療介入(予防も含めて)することが可能です。また、現在なんらかの治療薬を使用している場合でも、鍼治療を並行利用することが可能です。
今回のフランス・アメリカのニュースのみならず、治療薬・治療法の動向に対し、関心を寄せていく必要があるでしょう。また、注目度もますます高まっていきそうです。