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  • 執筆者の写真三焦はり院

はり療法も疼痛ケアの選択肢として有用な理由。トリガーポイント注射との比較からわかること。

はり療法は、「疼痛ケア」のひとつとして臨床応用されているケースが非常に多い印象です。


現代医療では、NSAIDs( Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug , 非ステロイド性抗炎症薬)の内服薬や湿布薬が処方されるケースや、局所注射(トリガーポイント注射, TP注射)などによる「疼痛ケア」が一般的です。


はり療法の利点としては、副作用がなく、上記の現代医療的疼痛ケアを補完する目的で使用されている場合がほとんどです。NSAIDsの副作用(主に上部消化管の問題)がでてしまった場合や、薬剤アレルギーがある、または効果が著しくないなどの理由で選択される場合が多い印象です。


明治国際鍼灸大学の研究報告によると、頚肩部痛や腰痛に対しおこなった研究において、「鍼療法は、局所注射より優れている」ことがわかりました。直後効果や、治療の継続による効果(痛みの経時変化量)の点で優れているという指摘がされています。(参照元https://meiji-u.ac.jp/about/research/unit/pdf/rinsyoshinkyu3.pdf)


研究においては、優位性評価を目的とした比較研究のため、「鍼治療群」「局所注射群」で分けていますが、臨床においては、併用することが可能です。相乗効果といった点でも非常に有用であると考えられています。もちろん内服薬との干渉(飲み合わせ)もないため、併用可能です。


また、研究においては「2~5箇所の刺鍼」程度となっていますが、臨床においては、程度(症状や範囲)に合わせて鍼の本数を増やしていくことが可能です。また、深度に関しても深部筋(ぎっくり腰と関係のある大腰筋)には75mm~90mmの鍼灸鍼を使用します。


はり療法に関して、「ただ鍼を刺して何に効くの?効くわけないでしょ?」という考えをお持ちの方は大変多いと思います。とくにはり療法未経験の方にこういった考えが多い印象です。しかし、はり療法で症状改善された方からは「薬でも塗ってあるのではないか?」と疑われてしまうこともあるくらい痛みが劇的に消失することもあります。


一般的に使用されている鍼灸鍼は「ただの金属(医療用ステンレス)」です。しかし、生体の良性反応を引き起こすことによって、「鎮痛作用」などが生まれます。


はりも弾力性があり、細さも髪の毛程度と安全性も高いと言えます。「疼痛ケア」の面で悩まれている場合は、ぜひ「はり療法」も検討してみて下さい。また、以下の特定6傷病では保険が適応可能です。※要医師の同意書、医療機関での保険利用による併療不可


特定6傷病:

1.神経痛

2.リウマチ

3.頸腕症候群

4.五十肩

5.腰痛症

6.頚椎捻挫後遺症

※保険者によっては「変形性膝関節症」なども適用となる場合もあります。


参考文献:

[1]井上基浩、中島美和、糸井恵、ほか.腰痛に対する鍼治療と局所注射の比較−ランダム化比較試験− 日本温泉気候物理医学会雑誌 2008; 71(4): 211-20.

[2]Nakajima M, Inoue M, Itoi M, Katsumi Y: A comparison of the effectiveness between acupuncture and local injection for neck pain: a randomized controlled trial. Journal JSAM, 57 (4): 491-500, 2007.

[3]Inoue M, Hojo T, Nakajima M, Kitakoji H et al: Comparison of the effectiveness of acupuncture treatment and local anaesthetic injection for low back pain: a randomised controlled clinical trial. Acupunct Med, 27(4): 174-7, 2009.

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