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  • 執筆者の写真三焦はり院

ベル麻痺やラムゼイハント症候群など顔面神経麻痺に対する鍼灸療法の考え方

顔面神経麻痺は中枢性と末梢性の2つに分類することができます。前者は脳卒中(脳梗塞・脳出血)などによって2次的に発症したもので、後者は末梢での神経浮腫やウィルス感染によって発症したものを指します。


本稿では、末梢性顔面神経麻痺、とくに多いベル麻痺とラムゼイハント症候群(ウィルス感染)に対する鍼灸療法の考え方を述べていきます。


ベル麻痺とラムゼイハント症候群は発症機序から違いますが、一番の違いは治癒率です。前者は現代医学的治療によって7割方快方に向かいますが、後者は3割程度しか快方に向かいません。


末梢性顔面神経麻痺に罹患したあと鍼灸療法を選択する方もいます。ご自身で辿りつく方、医師や医療機関から紹介される方と様々です。


東京女子医科大学(東洋医学研究所)のホームページには顔面神経麻痺治療に鍼灸を併用している旨が記載されています。(http://www.twmu.ac.jp/IOM/shinkyu/ganmen_gairai.html )発症から1ヶ月間は薬物療法など現代医学的治療法を優先し、医師や患者からの要望があれば鍼灸療法を併用するとしています。1ヶ月経過して停滞している場合や、重症例には3ヶ月くらいまでに鍼灸療法を行うとしています。


私が留学していた天津中医薬大学の第一付属病院は鍼灸臨床が中国で一番有名でした。顔面神経麻痺への鍼灸療法は以下のとおりです。


天津中医薬大学第一付属病院:

1)急性期から鍼灸療法を併用する

2)急性期(発症から10日程度)は浅刺で少鍼

3)急性期以降は多鍼

4)出来る限り毎日行う(週4日以上)


当然6ヶ月を超えると後遺症期となるため、出来るだけ早期から、集中して治療介入を行うことが重要です。東京女子医科大学のホームページに載せられているように、鍼灸療法併用によって予後が良かったり、停滞した症状に変化が見られたりといった例もあるため、「ベル麻痺は7割方治るからいいや」というような気持ちで治療に臨むのではなく、「やれることは全てやる」といった気持ちで治療に臨むことが重要です。


ベル麻痺では3割、ラムゼイハント症候群では7割の方に後遺症が残る可能性があると言われています。顔面神経麻痺の後遺症は審美的な問題が付きまといます。少しでも回復を早めて後遺症なく、もし残ってしまっても出来るだけ軽くなるように鍼灸療法を併用することは有意義であると思います。


また6ヶ月を経過しても、1年以内であれば変化がみられる場合もあるため、鍼灸療法を試してみることをおすすめします。

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