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  • 執筆者の写真三焦はり院

鍼治療における健康保険利用時の盲点

当院では、初診時に「健康保険利用希望の有無」を確認しています。


ご存じでない方も多いと思いますが、特定6傷病に限り鍼施術でも「健康保険利用」が可能です。しかし、特定6傷病だからといって無条件で健康保険利用が出来るわけでは無く、①医師の同意書が必要②併療ではない(現在、当該同意傷病に対し治療を受けていない)といった条件が付きます。


健康保険利用にあたって、併療の問題がよく発生します。ほとんどの方は、医療機関受診が先行してから鍼灸院を訪れます。痛み止めや湿布が処方されている場合や温熱療法や運動療法などのリハビリを並行している場合がほとんどです。


こういった中、併療が発生しない状況は限定されます。たとえば、、、①そもそも未治療②(標準治療を受けたが治療成績がよくなく)やむなく鍼施術を検討③(まれだが)ドクターが鍼が適当と判断、といったところでしょう。※本来の鍼の保険適用理由は②(同意書裏面参照)


一般的に、①の場合は症状が軽く、痛み止めや湿布などの治療と並行して行う必要がない状況と言えます。また、②の場合は症状が継続した状況で他に方法がないといった具合です。


問題となってくるのは、当初は鍼(保険適用)だけで症状をコントロール出来ていた方がなんらかの理由で症状増悪(悪化)し、併療が必要になった場合です。多くは自己判断で通院コンプライアンスが守れなくなった状況から発生します。こうなってしまった場合、当然ながら健康保険利用が出来ません。当該傷病に対し行う鍼に係る費用はすべて自費となります。症状は悪くなって、負担も大きくなる。あまりよい状況ではありません。


一時しのぎの治療や施術を受けたり、悪くなってからなんとかするよりも、悪くしないようにするほうが結果として身体的・金銭的な負担が軽減される印象です。症状が強く出ると生活の質がグッと低下します。仕事にいけない、歩くのもつらい、寝ていても起きてしまうなど弊害が出てしまいます。


継続加療の必要性は、「高齢者」、「慢性疾患」で高くなります。該当する方は、慢心せずに続けてみて下さい。


また、併療は鍼の健康保険利用が難しくなるだけで、実際は、併療してよかったという例もたくさんあります。とくに、もとから症状コントロールが難しいような場合は、変に我慢したりせず「(鍼との)併療」も検討してみて下さい。鍼施術が自費なると、どうしても損をしていると感じる方も出てくるようですが、実際はすでに健康保険を利用している状態のため、損をしているということはありません。


キーワード:

[1]併療(へいりょう):「医療機関での治療」と「施術所での施術」が同時に行われている状態

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