本来、はり師は鍼だけを打っていればよいはずですが、末梢性顔面神経麻痺に対しては、セルフケア指導やミラーバイオフィードバック法(MBF法、鏡をみながら顔をうごかす方法)も併せて行っています。
鍼灸師がリハビリ(機能訓練や指導)を行うことに対して、世の中には否定的な意見もあるかと思います。いわゆる、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)ではないのに、リハビリを行ってよいのか?ということです。
実は、免許に関しては、「名称独占(名前をつかってよい)」と「業務独占(業務を独占してよい)」が存在します。例えば、はり師は名称独占と業務独占があり、鍼施術は医師と鍼師にしか認められていません。ただし、リハビリ三職種に関しては、名称独占のみで、業務独占ではありません(リハビリは上記三職種以外にも認められている)。例えば、介護施設でリハビリ(機能訓練)を行う機能訓練指導員には看護師等も含まれます。そのため、鍼施術前後に表情筋の評価(柳原法)を行ったり、機能訓練を行うことは何ら問題にはなりません。
一 理学療法又は、作業療法の業務のうちには、理学療法士又は作業療法士の免許取得者以外の者が行なつても必ずしも危害を生ずるおそれのないものもあり、また、業務従事者に対する需要の現状からみても、業務の全部を免許取得者の独占分野にすることは必ずしも実情にそぐわないことからして、その業務を免許取得者の独占とはしないが、理学療法士又は作業療法士でない者が、理学療法士若しくは作業療法士又はそれにまぎらわしい名称を用いることは、禁止し、今後これら専門技術者の量の確保、質の向上を図つて、医学的リハビリテーシヨンの進展を期することとするものであること(法第一七条)。
技術面に関しては、第44回日本顔面神経学会 (2021)にて併催された第11回顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会に参加しました。
機能訓練は、後遺症予防の観点から重要でありますが、医療機関等の状況によっては、「必ずしも継続的に手厚く実施できるわけではない」との声もありました。そういったなか、当院では「鍼施術と併せて実施することが可能なこと」、「同一の担当施術者が実施することが可能なこと」から機能訓練も併せて提供しています。
また、鍼治療は週2回以上で提案していますが、同日に評価と機能訓練を実施できるため、病的共同運動を疑う前兆(痙攣など)まであわせて確認することができ、症状軽減・予防の点からも一助になっていると実感しています。もちろん、多施設を往復する手間も省けます。
そのほか、短期スパンで機能訓練を実施することによって、患者さんのセルフケアに対する習熟度が飛躍的に向上していきます。「セルフケアの習熟度」と「後遺症予防の成績」は表裏一体であると考えています。モチベーションの維持、目的の明確化に対してもよい影響を及ぼすと考えています。鍼施術によって回復を促し、セルフケアによって後遺症予防をすることで、よりよい治療成績が得られると信じています。